シンプラル法律事務所
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自己破産の論点整理

論点の整理です(随時増やしていく予定です。)

法人破産
■早期申立ての必要
@賃金債権が財団債権となるのは開始決定前3か月に限定
A労働者健康福祉機構の未払賃金立替払制度で破産管財人が証明できるのは破産申立前6か月以内に解雇されている者に限られる。

A
破産手続開始原因 立法例 ?列挙主義:個別的な債務者の行為を列挙する。
?概括主義:債務者の資力不足を示す一般指標を採用(日本)
規定 第15条(破産手続開始の原因) 
債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
2 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。
第2条(定義)
11 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。
第16条(法人の破産手続開始の原因)
債務者が法人である場合に関する前条第一項の規定の適用については、同項中「支払不能」とあるのは、「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」とする。
2 前項の規定は、存立中の合名会社及び合資会社には、適用しない。
管轄 専属的であり(6条)、かつ職分管轄については地方裁判所の管轄(法5条)。
複数の裁判所に管轄⇒先に破産手続申立をした裁判所に専属管轄(法5I)。
土地管轄 債務者が営業者⇒主たる営業所の所在地等を管轄する地方裁判所。
債務者が営業者でない⇒第1:債務者の住所、第2:居所、第3:最後の住所地(法5@、民訴法4A)
複数関係者 @連帯保証人間、主債務者と保証人及び夫婦の場合:
互いに連帯債務者の関係にある個人や、主債務者と保証人の関係にある個人の場合、そして夫婦の場合には、一方の個人について破産事件が係属している裁判所に対し他方の個人の破産手続開始の申立てが可能。(法5F)

債務の発生原因が共通している場合が多い。
破産法第5条
7 第一項及び第二項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる者のうちいずれか一人について破産事件が係属しているときは、それぞれ当該各号に掲げる他の者についての破産手続開始の申立ては、当該破産事件が係属している地方裁判所にもすることができる。
一 相互に連帯債務者の関係にある個人
二 相互に主たる債務者と保証人の関係にある個人
三 夫婦
A法人と代表者の場合:
法人とその代表者の場合にも、一方について既に破産手続等(再生手続や更生手続を含む)が係属している裁判所に他方の破産手続開始の申立てをすることもできる。(法5E)
破産法第5条
6 第一項及び第二項の規定にかかわらず、法人について破産事件等が係属している場合における当該法人の代表者についての破産手続開始の申立ては、当該法人の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができ、法人の代表者について破産事件又は再生事件が係属している場合における当該法人についての破産手続開始の申立ては、当該法人の代表者の破産事件又は再生事件が係属している地方裁判所にもすることができる。
B親子会社等の場合:
親会社と子会社又は孫会社(総株主等の議決権の過半数を有する場合)等の関係にある数法人に関して、1法人について破産手続、再生手続が係属している裁判所に他法人の破産手続開始の申立をすることを認めている。(法5BC)
同様に大会社とその連結子会社に関しても同様の扱いを認めている。
破産法第5条
3 前二項の規定にかかわらず、法人が株式会社の総株主の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法(平成十七年法律第八十六号)第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。次項、第八十三条第二項第二号及び第三項並びに第百六十一条第二項第二号イ及びロにおいて同じ。)の過半数を有する場合には、当該法人(以下この条及び第百六十一条第二項第二号ロにおいて「親法人」という。)について破産事件、再生事件又は更生事件(以下この条において「破産事件等」という。)が係属しているときにおける当該株式会社(以下この条及び第百六十一条第二項第二号ロにおいて「子株式会社」という。)についての破産手続開始の申立ては、親法人の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができ、子株式会社について破産事件等が係属しているときにおける親法人についての破産手続開始の申立ては、子株式会社の破産事件等が係属している地方裁判所にもすることができる。
4 子株式会社又は親法人及び子株式会社が他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、当該他の株式会社を当該親法人の子株式会社とみなして、前項の規定を適用する。
自己破産と強制執行
(6民運用参照)
 規定 破産法 第100条(破産債権の行使)
破産債権は、この法律に特別の定めがある場合を除き、破産手続によらなければ、行使することができない。
2 前項の規定は、次に掲げる行為によって破産債権である租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)を行使する場合については、適用しない。
一 破産手続開始の時に破産財団に属する財産に対して既にされている国税滞納処分
二 徴収の権限を有する者による還付金又は過誤納金の充当
破産法 第42条(他の手続の失効等)
破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産に対する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行、企業担保権の実行又は外国租税滞納処分で、破産債権若しくは財団債権に基づくもの又は破産債権若しくは財団債権を被担保債権とするものは、することができない
2 前項に規定する場合には、同項に規定する強制執行、仮差押え、仮処分、一般の先取特権の実行及び企業担保権の実行の手続並びに外国租税滞納処分で、破産財団に属する財産に対して既にされているものは、破産財団に対してはその効力を失う。ただし、同項に規定する強制執行又は一般の先取特権の実行(以下この条において「強制執行又は先取特権の実行」という。)の手続については、破産管財人において破産財団のためにその手続を続行することを妨げない。
3 前項ただし書の規定により続行された強制執行又は先取特権の実行の手続については、民事執行法第六十三条及び第百二十九条(これらの規定を同法その他強制執行の手続に関する法令において準用する場合を含む。)の規定は、適用しない。
4 第二項ただし書の規定により続行された強制執行又は先取特権の実行の手続に関する破産者に対する費用請求権は、財団債権とする。
5 第二項ただし書の規定により続行された強制執行又は先取特権の実行に対する第三者異議の訴えについては、破産管財人を被告とする。
6 破産手続開始の決定があったときは、破産債権又は財団債権に基づく財産開示手続(民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続をいう。以下この項並びに第二百四十九条第一項及び第二項において同じ。)の申立てはすることができず、破産債権又は財団債権に基づく財産開示手続はその効力を失う。
破産開始決定⇒不可・効力を失う・中止

破産手続き開始とともに、個別的権利執行は禁止される。(法100@)
破産手続開始後の強制執行開始できない(法42@)。
破産手続開始前からの強制執行も破産財団に対する関係で効力を失う(法42A)。

免責審理期間中の強制執行の禁止:
免責許可の申立てがあり、かつ、同時破産手続廃止決定(法216@)、異時破産手続廃止決定(法217@)、配当終結決定(法220@)があったときは、免責許可の申立についての裁判が確定するまでの間は、破産者の財産に対する破産債権に基づく強制執行等、破産債権に基づく財産開示手続の申立て又は破産者の財産に対する破産債権に基づく国税滞納処分はすることができず、破産債権に基づく強制執行等の手続で破産者の財産に対してすでになされているもの及び破産者についてすでになされている破産債権に基づく財産開示手続は中止する(法249@)。 

免責確定 免責許可決定確定の効果として、破産者は、破産手続きによる配当を除き、破産債権についてその責任を脱がれる。
(法252F、法253@)
破産法 第252条(免責許可の決定の要件等)
7 免責許可の決定は、確定しなければその効力を生じない。
破産法 第253条(免責許可の決定の効力等)
免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。
本来的自由財産 規定 破産法 第34条(破産財団の範囲) 
破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
2 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
3 第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない
一 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
二 差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第百三十二条第一項(同法第百九十二条において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
民執法 第152条(差押禁止債権)
次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
2 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
3 債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。
趣旨 差押禁止財産は、法が定めた本来的自由財産。(法34B(2))
原則として破産者が全て保有できる。
各種の差押禁止財産   小規模企業共済は、事業者の「退職金」共済制度として差押禁止財産。(小規模企業共済法15条)
中小企業退職金共済(中退共)も、従業員の退職金共済制度として差押禁止財産。(中小企業退職金共済法20条)
平成3年3月31日以前に効力が発生している簡易保険契約の保険金又は還付金請求権は差押禁止財産。(平成2年改正前の旧簡易生命保険法50条。ただし、契約者配当金、未経過保険料等は差押可能であることに注意。)
大工道具、利用器具等の技術者等の業務上必要な器具類。(民執131(6))
各種の保険給付受給権(健保52,61)。
高額医療費の支給(同52(9))、家族埋葬料の支給(同52(7))
生活保護受給権等(生活保護法58)、失業等給付受給権(雇用保険法11)、労働者の補償請求権(労基83A)、交通事故の被害者の直接請求(自賠16@、18)
年金 年金受給権は差押禁止債権(国年24、厚生年金41、国家公務員共済組合法49)
銀行預金となった後は、差押禁止債権の属性を承継せず、預金債権として差押可能(最高裁H10.2.10)。
企業年金も差押禁止財産:
1.確定給付企業年金(確定給付企業年金法34条)
2.確定拠出年金(確定拠出年金法32条)
3.厚生年金基金(厚生年金保険法41条、136条)
執行法上の差押禁止財産 第131条(差押禁止動産)
次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。
一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
三 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
四 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
五 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
六 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
七 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
八 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
九 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
十 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
十一 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
十二 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
十三 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
十四 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
退職金 破産手続開始決定の時点で退職した場合に支給される退職金の4分の3は差押禁止となっており(民執152条)、この部分は本来的自由財産。
本来的自由財産が多い場合 自由財産拡張の場面では、破産管財人が拡張の必要性の判断の中で考慮。
多額の本来的自由財産⇒拡張の必要性なしとして拡張不相当とされやすくなる。
破産者の取締役としての責任(善管注意義務違反等)との関係や免責不許可事由が相当程度あり裁量免責のために積立が必要
⇒事案ごとに一定額を破産財団に組み入れる処理が行われている。
自由財産拡張制度 意義 破産者の経済的再生のためには、必ずしも、本来的自由財産だけでは十分ではなく、それ以外の財産(預金等)についても自由財産として破産者の手元に残すことが必要
⇒破産法上、裁判所は、管財人の意見を聞いた上で、破産者の生活状況、破産手続開始の時において破産者が有していた本来的自由財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、自由財産の範囲を拡張する決定をすることができる。
規定 第34条(破産財団の範囲) 

4 裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。

5 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、破産管財人の意見を聴かなければならない。
(1)定型的拡張適格財産 @預貯金・積立金
A保険解約返戻金
B自動車
C敷金・保証金返還請求権
D退職金債権
E電話加入権
F申立時において、回収済み、確定判決取得済み又は返還額及び時期について合意済の過払金返還請求権
(1)以外の財産 原則として拡張適格財産とならない。
ただし、破産者の生活状況は今後の収入見込み、拡張を求める財産の種類、金額その他の個別的な事情に照らして、当該財産が破産者の経済的再生に必要かつ相当であるという事情が認められる場合には、拡張適格財産とする(相当性の要件)。
売掛金や事業に関連する動産 たとえ事業継続が破産者の経済的再生の手段になっている場合であっても、破産者に管理処分権が帰属することにより混乱が生じるおそれがあること、事業に関連した債権者がいる場合には当該債権者との公平などを考慮して、慎重に相当性を判断する必要があろう。
手続 @破産者から自由財産の範囲拡張の申立て(法34C)
A管財人からの意見聴取(法34D)
B裁判所は拡張の裁判(法34C)
@ 拡張申立て
A 管財人と申立代理人(破産者)との意見調整及び黙示の拡張決定
B 管財人と申立代理人(破産者)との意見が両者の協議によっても一致しない場合

裁判所は、管財人の意見を考慮した上、自由財産拡張に関する判断を行い、決定書を破産者及び管財人に送達する(法34F)。
←破産者の不服申立ての機会を奪わないために、明示的な判断を行う必要がある。
免責不許可事由 規定  第252条(免責許可の決定の要件等)
裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一 第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
2 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
3 裁判所は、免責許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者及び破産管財人に、その決定の主文を記載した書面を破産債権者に、それぞれ送達しなければならない。この場合において、裁判書の送達については、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
4 裁判所は、免責不許可の決定をしたときは、直ちに、その裁判書を破産者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
5 免責許可の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
6 前項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第十条第三項本文の規定は、適用しない。
7 免責許可の決定は、確定しなければその効力を生じない。
  ●詐害目的での財産の不利益処分(1項1号) 
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
◎詐害目的(条解p1581) 
「債権者を害する目的」は、債権者を害することを、主たる目的とするとまで限定する必要はないが、債権者の破産手続における満足を、積極的に低下させようとする害意が存することを意味する。
破産者が、自己の利益のために、一定の価値のある財産を隠匿する行為は、その際に、「破産債権者への配当を減らすため」との積極的な意思の存在を直接認めるに足る証拠が存しなくても、当該行為自体が、当該意思の発現であることを推認させるものというべき。
  ●浪費または射幸行為(1項4号) 
◎財産減少、課題債務負担との因果関係
浪費や賭博その他の射幸行為と破産者の著しい財産減少や過大な債務負担との間に相当因果関係が必要。
賭博等が過大な債務負担の遠因にすぎないときは、相当因果関係は認められない。
賭博や射幸行為と著しい財産減少や過大な債務負担との間に相当因果関係が認められても、それは一因にすぎず、他に主要な原因があるときは、その主要な原因をもとに免責不許可事由の有無を検討すべき。
(条解p1589)
すでに支払不能に陥っている債務者が、賭博や射幸行為を行っても、それによって新たに著しい財産減少や、過大な債務負担が生じないかぎり、4号の適用はない。
(条解p1589)
意図的に破産債権者を害する行為をしたとみなされる類型 @不当な破産財団価値減少行為(法252@(1))
A不当な債務負担行為(法252@2)
B不当な偏頗行為(法252@3)
C浪費または賭博その他の射幸行為(法252@(4))
D詐欺による信用取引(法252@(5))
E帳簿隠滅等の行為(法252@(6))
F虚偽の債権者名簿提出行為(法252@(7))
破産法上の義務の履行を怠り、手続きの進行を妨害する行為類型 G調査協力義務違反行為(法252@(8))
H管財業務妨害行為(法252@(9))
Iその他の義務違反行為(法252@(11))
免責制度にかかわる政策的事由 J7年以内の免責取得の事実:以前の免責許可の決定の確定の日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと。(法252@(10))
犯罪 詐欺破産罪  詐欺破産罪 第265条(詐欺破産罪) 
破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
一 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為
二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
2 前項に規定するもののほか、債務者について破産手続開始の決定がされ、又は保全管理命令が発せられたことを認識しながら、債権者を害する目的で、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その債務者の財産を取得し、又は第三者に取得させた者も、同項と同様とする。
復権 復権とは 破産手続開始に基づいて破産者に発生する人的効果、すなわち各種の資格あるいは権利についての制限を消滅させ、破産者の本来の法的地位を回復させること。(法255A) 
当然復権 @免責許可決定の確定(法255@(1))
A同意破産手続廃止決定の確定(法255@(2))
B再生計画認可決定の確定(法255@(3))
C破産手続開始後10年の経過(法255@(4))
申立による復権 破産者が破産債権者全員に対する債務についてその責任を免れた場合。(法256@)
廃止  法人の場合 同意破産手続廃止⇒法人解散の手続がとられる。(破産法219条)
異時破産手続廃止⇒破産手続開始に基づく解散の効果が存続する。
(一般法人148(6)、202@(5)、会社法471(5)、641(6)等)
その後残余財産が発見された場合、解散法人について清算手続を行う必要。(一般法人206(1)かっこ書、会社法475(1)括弧書、644(1)括弧書等)
株式会社が破産⇒株式会社と取締役との間の委任関係が終了(会社法330条、民法653(2))⇒従前の取締役は清算人となりえず、株主総会において新たに清算人が選任されるか(会社法478@(3))、利害関係人の請求によって裁判所が清算人を選任。(同条A)
破産会社への訴訟 特別代理人を選任する必要
取締役の破産 会社法 第330条(株式会社と役員等との関係)
株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う。

民法 第653条(委任の終了事由)
委任は、次に掲げる事由によって終了する。
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
会社法330条によって会社と取締役との関係は委任⇒破産手続開始決定により、取締役を退任(民法653条2号)。
破産手続開始決定を受けた者を新たに取締役に選任することは可能。
(株主総会の判断に委ねる
受任者の破産によって委任が終了しない旨の特約は有効(通説)。
←破産者であっても他人の事務を処理することはできる。(注釈民法16p296)
賃借人の破産

賃借人の破産管財人は賃貸借契約について履行の請求または解除を選択できる。(法53条)
借地契約→破産管財人は履行を請求し、借地権の譲渡を目指す。
借家契約→敷金を現実化して破産財団に組入れるため、解除を選択。

賃借人が破産し、賃貸借契約が解約されることなく存続→賃料請求権は財団債権となる。(法148条1項7号)
賃借人が破産し、破産管財人が解約しても、ただちには契約が終了しない場合がある。(民法617条1項、借地借家27条1項)
その場合には、破産手続き開始後契約終了までに生じた相手方の請求権を財団債権とする。(法148条1項8号)
相続人の破産 破産手続き開始前に承認や放棄がなされた場合:
破産債権者がその効果を覆すことは認められない。
単純承認や放棄が破産債権者の利益を害する場合であっても、否認の対象とはならない。
破産手続開始前の相続に基づいて開始後に破産者による承認や放棄がなされる場合:
単純承認について限定承認の効果を認め、放棄についても同様の取扱いをする。(法238@)
破産管財人は、相続財産を破産財団所属財産と分別管理し、相続債権者については相続財産から、相続人債権者については固有財産から配当を行う。(法242@B、240C)
離婚と破産 財産分与 「一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してなされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消の対象となりえない。」(最高裁昭和58.12.19 H12.3.9)
慰謝料 離婚に伴う慰謝料として配偶者の一方が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額を支払う旨の合意は、右損害賠償債務の額を超えた部分について、詐害行為取消権の対象となる。(最高裁H12.3.9)
財産分与、慰謝料として相当な範囲であれば、有害性はあっても不当性はない。

破産管財人としては、財産分与、慰謝料として相当な範囲のものであるか否かを検討し、それを超えるものについては、否認権の行使を検討する。
養育費 養育費は要扶養状態の存在により日々発生する権利であり、破産手続開始決定後に日々発生する部分は、手続外債権であり、それは、将来の養育費の額が、審判等で決定されていても同様(大阪地裁)
養育費の一括払として支払われたものについては、特に一括払が必要であるという特段の事情がない限り、養育費として相当な範囲を超えたものとして、否認権の行使を検討すべき。
破産債権と財団債権 意義 破産債権:破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権で、財団債権に該当しないもの。(法2D)
財団債権:破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権(法2F)
財団債権の種類 @破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権(法148条@(1))
A破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権(法148条A(2))
B破産手続開始前の租税等の請求権(法148条@(3))
C破産財団に関して管財人がした行為によって生じた請求権(法148条@(4))
D事務管理又は不当利得により破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権(法148@(5))
E委任の終了又は代理権の消滅後、急迫の事情があるためにした行為によって破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権(法148@(6))
F未履行の双務契約について管財人の履行選択により相手方有する請求権(法148@(7))
G破産手続の開始によって双務契約の解約の申入れがあった場合において破産手続開始後その契約の終了までの間に生じた請求権(法148条@(8))
H管財人が負担付遺贈の履行を受けたときに、その負担した義務の相手方が有する当該負担の利益を受けるべき請求権(法148条A)
I保全管理人が権限に基づいてした行為によって生じた請求権(法148条C)
J民事再生手続上の共益債権(民再254条E) 
K会社更生手続上の共益債権(会社更生254条E)
L破産手続開始決定の時点で既にされていた強制執行等を管財人が続行した場合の手続費用の請求権(法42条C)
M破産者を当事者とした訴訟が中断し、管財人が受継した場合の相手方の訴訟費用償還請求権(法44条B)
N債権者代位訴訟、詐害行為取消訴訟が中断し、管財人が受継した場合の相手方の訴訟費用償還請求権(法45条B)
O管財人が双方未履行の双務契約を解除した場合に、破産者が受けた反対給付が破産財団に現存しない場合の価額償還請求権(法54条A)
P継続的給付を目的とする双務契約の相手方が、破産手続開始の申立て後破産手続開始前にした給付の請求権(一定期間で算定する場合には、申立日の属する期間分の全部を含む。)法55条A
Q異議を主張した破産債権者が査定申立てないし確定訴訟で勝訴した場合の訴訟費用償還請求権(法132条)
R 債権者委員会に貢献的活動があった場合に、その費用を支出した破産債権者の費用償還請求権を財団債権とするとの許可を得た場合の請求権(法144条C)
S社債管理会社等の費用報酬請求権を財団債権とする許可がされた場合の請求権(法150条C)
21 破産者の行為が否認された場合の反対給付が財団に現存しない場合の価額償還請求権(法168条)
租税債権  財団債権

@ 破産手続開始前の原因により発生した租税等の請求権で、手続開始当時、納期限が未到来又は納期限から1年を経過していないもの。(法148条@(3))
A 破産手続開始後の原因により発生した租税等の請求権で、財団の管理、換価及び配当に関する費用に該当するもの。(法148条@(2))
B @及びAの延滞税。(破産手続開始決定の前に発生すると後に発生するとを問わない。) 

優先的破産債権 租税等の請求権であって、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じたものは、個別の規定によって財団債権又は劣後的破産債権とされるものを除くほかは、すべて優先的破産債権となる。

国税及び地方税には、一般的優先権あり。(税徴8、地税14)
「国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」(破産法97条@(4))も、国税の固有の性質のものを除いて国税徴収に関する法規の一般的な準用を受けるという意味で、一般的優先権が認められる。 
劣後債権

@ 破産手続開始後の延滞税等(法97(3)、99@(1))
財団債権である租税等の請求権について生じる延滞税は財団債権。
優先的破産債権である租税等の請求権の破産手続開始後の延滞税等のみが劣後的破産債権となる。

A 破産財団に関して破産手続開始後の原因に基づいて生じるもののうち、破産財団の管理、換価及び配当に関する費用等に該当しないもの。(法97(4)、99@(1)、148@(2))
ex.破産会社所有の建物が抵当権の実行により競売され、買受代金の全額を抵当権者が取得した場合の売却に伴う消費税。

B 加算税等(法97(5)、99@(1))
cf.罰金は劣後的破産債権。(法97(6)、99@(1))
〜破産者本人に対する制裁であり、これを一般の破産債権と同列に扱うことは、破産者の負担を破産債権者の負担に転嫁する結果となる。
(⇒法は劣後的破産債権とした。)

債権の支払時期 規定 破産法 第103条(破産債権者の手続参加)
3 破産債権が期限付債権でその期限が破産手続開始後に到来すべきものであるときは、その破産債権は、破産手続開始の時において弁済期が到来したものとみなす。
破産法 第148条(財団債権となる請求権) 
次に掲げる請求権は、財団債権とする。
一 破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権
二 破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権
三 破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税等の請求権(第九十七条第五号に掲げる請求権を除く。)であって、破産手続開始当時、まだ納期限の到来していないもの又は納期限から一年(その期間中に包括的禁止命令が発せられたことにより国税滞納処分をすることができない期間がある場合には、当該期間を除く。)を経過していないもの
四 破産財団に関し破産管財人がした行為によって生じた請求権
五 事務管理又は不当利得により破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権
六 委任の終了又は代理権の消滅の後、急迫の事情があるためにした行為によって破産手続開始後に破産財団に対して生じた請求権
七 第五十三条第一項の規定により破産管財人が債務の履行をする場合において相手方が有する請求権
八 破産手続の開始によって双務契約の解約の申入れ(第五十三条第一項又は第二項の規定による賃貸借契約の解除を含む。)があった場合において破産手続開始後その契約の終了に至るまでの間に生じた請求権
2 破産管財人が負担付遺贈の履行を受けたときは、その負担した義務の相手方が有する当該負担の利益を受けるべき請求権は、遺贈の目的の価額を超えない限度において、財団債権とする。
3 第百三条第二項及び第三項の規定は、第一項第七号及び前項に規定する財団債権について準用する。この場合において、当該財団債権が無利息債権又は定期金債権であるときは、当該債権の額は、当該債権が破産債権であるとした場合に第九十九条第一項第二号から第四号までに掲げる劣後的破産債権となるべき部分に相当する金額を控除した額とする。
破産法 第149条(使用人の給料等)
破産手続開始前三月間の破産者の使用人の給料の請求権は、財団債権とする。
2 破産手続の終了前に退職した破産者の使用人の退職手当の請求権(当該請求権の全額が破産債権であるとした場合に劣後的破産債権となるべき部分を除く。)は、退職前三月間の給料の総額(その総額が破産手続開始前三月間の給料の総額より少ない場合にあっては、破産手続開始前三月間の給料の総額)に相当する額を財団債権とする。
労働債権   ★財団債権となる労働債権 規定 破産法 第149条(使用人の給料等)
破産手続開始前三月間の破産者の使用人の給料の請求権は、財団債権とする。
2 破産手続の終了前に退職した破産者の使用人の退職手当の請求権(当該請求権の全額が破産債権であるとした場合に劣後的破産債権となるべき部分を除く。)は、退職前三月間の給料の総額(その総額が破産手続開始前三月間の給料の総額より少ない場合にあっては、破産手続開始前三月間の給料の総額)に相当する額を財団債権とする。
総論 @破産手続開始前3か月間の使用人の給料の請求権(法149@)
A破産手続終了前に退職した使用人の退職手当の請求権のうち、退職前3か月間の給料の総額破産手続開始前3か月間の給料の総額のいずれか多いほうの額に相当する金額(法149A)
  ■(ア) 破産手続開始前3か月間の使用人の給料の請求権(法149@)
破産手続開始前3か月間の請求権が、財団債権となる。
●「給料」の範囲
破産者との間に、労働に従事してい報酬を受ける関係が実態として認められればたり、契約書「委任」や「請負」の形式がとられていても雇用関係を認めることは妨げない。
労働の対価として支払われるものであれば名目を問わず「給料」に該当する。
「給料」に該当
○基本給
○賞与
○扶養家族手当て、残業手当、通勤手当等の各種手当
「給料」に該当せず⇒財団債権とはならない。
×実費弁償として支払われる出張手当のようなもの
×解雇予告手当
解雇予告手当:
労働の対価ではない⇒「給料」に含まれない⇒本条の財団債権とはならない。
遅延損害金は年5分。
雇用関係に基づき生じた債権には該当する⇒優先債権には含まれる。
解雇予告手当の支払なしになされた即時解雇は、その後30日を経過するまで効力を生じない(最高裁昭和35.3.11)。
⇒解雇後30日間の未払給料(又は休業手当)の請求権=給料⇒財団債権に
  ●算定方法 
○開始決定との関係
「破産手続開始前3か月の給料」
〜その期間内の労務の提供に対応する給料。
月払であっても、労務を提供する度に、給料請求権は日々発生。
給料日が破産手続開始決定後であっても、その日に支払われる給料が、その期間相に提供された労務に対応する分を含んでいる
⇒その部分は財団債権となる。
労務提供の日から、破産手続開始決定が3か月以内になされなければ、財団債権には含まれない⇒未払給料の案件では、申立代理人は早急に申立てを行い、裁判所はできるだけ早く開始決定を行う。
 ○ ○手当の計算
「給料」は、基本給だけでなく、残業手当等を含む実際の支給額
⇒残業手当、休日出勤手当等の算定を行う必要
⇒賃金台帳、タイムカード等の資料が不可欠。
○給料の日割計算 
解雇通知:4月1日
開始決定日:4月15日
開始決定3か月前応当日:1月15日
1月15日〜1月20日:日割計算(6日分)
1月21日〜2月20日:2月分の本来の給与額
2月21日〜3月20日:3月分の本来の給与額
3月21日〜4月1日:日割計算(12日分)
○賞与についての算定 
賞与〜基本的には、支給日に全額発生

@破産手続開始決定前3か月の間に賞与の支給日が到来し、かつ未払いのものは、財団債権
A賞与支給日が破産手続開始決定前3か月より前⇒財団債権とはならない
賞与は「支給日に在籍する従業員に支給する」と就業規則等で規定されていること(いわゆる在籍要件)が多く、在籍要件も法律上有効⇒支給日に在籍していることも要件となる。
会社によっては異なる支給条件の就業規則あり⇒支給規定を確認する必要。
    ■(イ) 破産手続終了前に退職した使用人の退職手当の請求権のうち、退職前3か月間の給料の総額破産手続開始前3か月間の給料の総額のいずれか多いほうの額に相当する金額
    法149条2項は、退職手当の一部も財団債権とする旨を規定。
対象:破産手続終了前に退職した者
退職が破産手続開始決定の前後のいずれかを問わない
財団債権とされる金額:
@退職前3か月間の給料の総額とA手続開始前3か月の給料の総額のいずれか多い額。
←破産手続開始後に雇用が一時継続される場合、給料が切り下げられることがあり、「退職前3か月間の給料の総額」が、通常勤務時よりも相当に低いことがあり得る。
★優先的破産債権となる労働債権   財団債権に該当しない労働債権 はすべて優先的破産債権(法98@、民306(2)、308。)
(解雇予告手当も含まれる。)
規定 破産法 第98条(優先的破産債権)
破産財団に属する財産につき一般の先取特権その他一般の優先権がある破産債権(次条第一項に規定する劣後的破産債権及び同条第二項に規定する約定劣後破産債権を除く。以下「優先的破産債権」という。)は、他の破産債権に優先する。
民法 第306条(一般の先取特権)
次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
二 雇用関係
第308条(雇用関係の先取特権)
雇用関係の先取特権は、給料その他債務者と使用人との間の雇用関係に基づいて生じた債権について存在する。.
★情報提供努力義務 規定 破産法 第86条(破産管財人の情報提供努力義務)
破産管財人は、破産債権である給料の請求権又は退職手当の請求権を有する者に対し、破産手続に参加するのに必要な情報を提供するよう努めなければならない。
  ←使用人の給料請求権、退職手当請求権については、債権者側に権利行使に必要な情報(資料)が必ずしも存在せず、権利行使が容易でない。
給料又は退職手当の請求権の全額が財団債権となる者についても、管財人は情報を提供するよう努力すべき。

財団債権であっても、簡易配当の場合、管財人が簡易配当の通知の到達すべき期間を経過した旨の届出をした後2週間を経過した時(法205条、203条、法200@)までに管財人に知れていなければ、弁済を受けることができない。
      ★労働債権の弁済許可
 
未払賃金の立替払制度 制度 賃金の支払の確保等に関する法律に基づき、企業が「倒産」したために賃金が支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対して、その未払い賃金の一定の範囲について、独立行政法人労働者健康福祉機構が事業主に代わって支払う制度。
「倒産」 法律上の倒産:
破産・特別清算・民事再生・会社更生の開始について裁判所の決定又は命令があった場合。
中小企業における事実上の倒産:
事業活動に著しい支障を生じたことにより、労働者に賃金を支払えない状態になったことについて労働基準監督署長の認定があった場合。
@事業活動が停止し、A再開する見込みがなく、B賃金支払能力がない状態になったこと。
要件 使用者 @労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業で1年以上事業活動を行っていたこと。
(法人、個人の有無、労災保険の加入手続の有無、保険料納付の有無は問わない。)
A法律上の倒産又は事実上の倒産に該当することとなったこと。
労働者 @倒産について裁判所へ破産申立等(事実上の倒産の場合は、労働基準監督署長への認定申請)が行われた日の6カ月前から2年の間に退職していること。
破産手続開始の申立又は認定申請日:H21.4.12
6カ月前の日:H20.10.12(@)
2年目の日:H22.10.11(A)
@〜Aの間に退職した人が対象。
A未払賃金があること(但し、未払賃金の総額が2万円未満の場合は立替払いを受けられない。)
対象となる賃金  退職日の6か月前の日から機構に対する立替請求の日の前日までの間に支払日が到来している「定期賃金」及び「退職手当」で未払いのもの。
×賞与その他の臨時的に支払われる賃金、解雇予告手当、賃金に係る遅延利息、慰労金や祝い金名目の恩恵的又は福利厚生上の給付、実費弁償としての旅費等
対象となる未払賃金は、税、社会保険料、その他の控除金の控除前の額。
その他の控除金のうち、事業主の債権に基づき、当該賃金から控除が予定されているもの(社宅料、会社製品の購入代金、貸付金返済金等)については控除する。
請求期間 裁判所の破産等の決定又は労働基準監督署長の倒産の認定があった日の翌日から起算して2年以内。
立替払される額 未払賃金総額の8割。
退職日の年齢に応じて限度額が設けられており、未払賃金総額がその限度額を超える時はその限度額の8割。
45歳以上:未払賃金総額の限度額370万円、立替払限度額296万円
30歳以上45歳未満:220万円 176万円
30歳未満:110万円 88万円
破産と時効 主債務者破産の場合 自然人 主債務者(自然人)破産・免責
⇒免責された主債務者に対する履行請求等ができず、民法166条1項に定める「権利を行使することを得る時」を起算点とする消滅時効の進行を観念することができない。
⇒保証人は、主債務の消滅時効を援用できない。
(最高裁H11.11.9)
法人の場合 会社が破産宣告を受けた後破産終結決定がされて会社の法人格が消滅した場合には、これにより会社の負担していた債務も消滅
存在しない債務について時効による消滅を観念する余地はない
破産終結決定がされて消滅した会社を主債務者とする保証人は、主債務についての消滅時効が会社の法人格の消滅後に完成したことを主張して時効の援用をすることはできない
(最高裁H15.3.14)
終了 配当による破産手続終結 説明 裁判所は、最後配当、簡易配当まtがは同意配当が終結⇒計算の報告のための債権者集会(破産法88W)が終了
したとき、または計算の報告書に対する異議提出期間(破産法89U)が経過したとき
破産手続終結決定をしなければならない(破産220T)。
裁判所は、直ちに、決定の主文および理由の要旨を公告し、かつ、これを破産者に通知(同U)。
この決定に対する不服申立ては認められない。
←残余財産の問題は、追加配当手続の中で扱われる。
破産手続終結決定の公告によって破産手続は終結し、したがって、破産者に対する関係では、破産手続開始に基づく人的効果(破産法37等)も消滅するし、残余の財産があれば、それについての破産者の管理処分権が回復される(破産法78T)。
破産債権者に対する関係では、個別的権利行使の制限(破産法100T)も解除される。
法人の場合 破産者が法人⇒破産手続終結の効果として法人格が消滅するが(破産法35、一般法人148E・202TD参照)、残余の財産があれば法人格の存続を認めざるを得ない
破産法人が主債務者となっている場合には、法人格の消滅が保証人の債務に影響を与えるかどうかについては、破産法253条2項の趣旨などから、これを否定すべき。
財団不足による廃止 異時廃止 規定 会社法 第471条(解散の事由)
株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。
五 破産手続開始の決定
会社法 第641条(解散の事由)
六 破産手続開始の決定
会社法 第475条(清算の開始原因)
株式会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
一 解散した場合(第四百七十一条第四号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)
会社法 第644条(清算の開始原因) 
持分会社は、次に掲げる場合には、この章の定めるところにより、清算をしなければならない。
一 解散した場合(第六百四十一条第五号に掲げる事由によって解散した場合及び破産手続開始の決定により解散した場合であって当該破産手続が終了していない場合を除く。)
説明 異時破産手続廃止
⇒破産手続開始にもとづく解散の効果が存続(一般法人148E、202TD、会社471D、641E等)。
but
異時破産手続廃止がなされる場合でも常に財産が皆無とはいえないし、廃止決定後に残余財産が発見されることもある。
⇒その場合には、解散法人について清算手続を行う必要(一般法人206@かっこ書、会社475@かっこ書、644@かっこ書等)。
株式会社が破産⇒株式会社と取締役との間の委任関係が終了(会社法330条、民法653条A)⇒従前の取締役は清算人となりえず、株主総会において新たに清算人が選任されるか(会社478TB)、利害関係人の請求によって裁判所が清算人を選任(同条U)。

相殺権の制限
規定 破産法 第71条(相殺の禁止)
破産債権者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。

一 破産手続開始後に破産財団に対して債務を負担したとき。
二 支払不能になった後に契約によって負担する債務を専ら破産債権をもってする相殺に供する目的で破産者の財産の処分を内容とする契約を破産者との間で締結し、又は破産者に対して債務を負担する者の債務を引き受けることを内容とする契約を締結することにより破産者に対して債務を負担した場合であって、当該契約の締結の当時、支払不能であったことを知っていたとき。
三 支払の停止があった後に破産者に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。
四 破産手続開始の申立てがあった後に破産者に対して債務を負担した場合であって、その負担の当時、破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。

2 前項第二号から第四号までの規定は、これらの規定に規定する債務の負担が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない。
一 法定の原因
二 支払不能であったこと又は支払の停止若しくは破産手続開始の申立てがあったことを破産債権者が知った時より前に生じた原因
三 破産手続開始の申立てがあった時より一年以上前に生じた原因
破産法 第72条
破産者に対して債務を負担する者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。

一 破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき。
二 支払不能になった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払不能であったことを知っていたとき。
三 支払の停止があった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、支払の停止があったことを知っていたとき。ただし、当該支払の停止があった時において支払不能でなかったときは、この限りでない。
四 破産手続開始の申立てがあった後に破産債権を取得した場合であって、その取得の当時、破産手続開始の申立てがあったことを知っていたとき。

2 前項第二号から第四号までの規定は、これらの規定に規定する破産債権の取得が次の各号に掲げる原因のいずれかに基づく場合には、適用しない。
一 法定の原因
二 支払不能であったこと又は支払の停止若しくは破産手続開始の申立てがあったことを破産者に対して債務を負担する者が知った時より前に生じた原因
三 破産手続開始の申立てがあった時より一年以上前に生じた原因
四 破産者に対して債務を負担する者と破産者との間の契約
破産法 第67条(相殺権) 
破産債権者は、破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで、相殺をすることができる
2 破産債権者の有する債権が破産手続開始の時において期限付若しくは解除条件付であるとき、又は第百三条第二項第一号に掲げるものであるときでも、破産債権者が前項の規定により相殺をすることを妨げない。破産債権者の負担する債務が期限付若しくは条件付であるとき、又は将来の請求権に関するものであるときも、同様とする。
趣旨   破産において相殺が有効と認められるためには、さらに
@他の破産債権者を害することなく、また
A債権者平等の理念に反しないことが要求される。 
類型  相殺権の範囲も、破産手続き開始時を基準時として決定される(法67@)

破産手続開始後に相殺の基礎たる債務を負担したり、債権を取得しても、それを基礎とする相殺は債権者平等に反するものとされ、その効力が否定される(法71@(1)、72@(1))。
破産手続開始時を基準時とする画一的な破産債権者間の平等が基礎⇒債務負担や債務取得の 原因に関する例外は認められない(法71A、72A)。
破産手続開始時に相殺権を取得している者でも、その取得が支払停止や破産手続開始申立後の危機時期になされる場合には、債権者平等の理念に反するものとして、相殺が否定されることがある(法71@(3)(4)、72@(3)(4))。 
一方で支払停止などの事実についての相殺権者の悪意を要求し、他方で、相殺権の取得原因に関して一定の例外を設けている(法71A,72A)。

危機時期に取得された相殺期待が真に債権者平等に反するものであるかどうか、逆に危機時期以前に破産債権者らが合理的な相殺期待を取得していたかどうかを判断するため。
相殺期待の詐害的創出とでもいうべき類型(法71@(2)、72@(2))

支払停止または破産手続開始申立てという危機時期の徴表たる行為がなされる前の時期で、債権者平等に対する期待は未だ具体化していないが、債務者はすでに支払不能の状態にあり、総債権者のために自らの責任財産を維持することを期待されているにもかかわらず、債務者と再検査が通じて相殺期待を創出し、またはこれと同視される行為を行った場合に、責任財産の実質的減少を根拠として、相殺を禁止するもの。
旧法には存在せず、現行法によって創設されたもの。
  ■受働債権たる債務負担の時期による相殺の禁止(法71) 
  ■自働債権たる破産債権取得の時期による相殺の禁止(法72) 
●破産者の債務者が、破産者が支払不能になった後にそれについて悪意で破産債権を取得したとき(法72@(2)) 
破産者に対して債務を負担する者がその負担を免れようとすれば、すでに経済的価値を失った他人の破産債権を廉価で買い受け、自らの債務と相殺することが考えられる。
このような相殺を認めることは、破産財団所属の財産である当該債務を失わせる結果となる。
このような作為によって破産者に対する債務を免れようとするのは、破産債権を取得した者が破産者の支払不能について悪意である場合に限られる⇒相殺を禁止するためには悪意の照明が要求される。
   


異同 破産債権 財団債権 
破産手続内でのみ請求。 破産手続外で行使。
届出、認否、確定など破産法上の債権調査の対象となる。    債権調査の対象とならない。
(確定が必要な場合は訴訟による。) 
配当手続によらなければ弁済できない。  配当手続ではなく任意の方法で弁済できる。 
免責の対象となる。 免責の対象とならない。

否認権行使の効果
規定 破産法 第167条(否認権行使の効果)
否認権の行使は、破産財団を原状に復させる。
破産管財人による否認権行使⇒破産者から受益者等に移転した財産権は当然に破産財団に復帰。
but
これは観念的な権利の移転。

実際に破産管財人がその財産権を管理処分するためには、相手方から任意に目的物の返還を受けるとか、引渡しなどを求める強制執行をするとかの具体的行為が必要となる。
財産権自体の復帰が不可能または著しく困難な場合には、破産管財人は、その返還に代えて価値の償還を求めることができる。
●金銭給付の返還


否認の登記
規定 第260条(否認の登記)
登記の原因である行為が否認されたときは、破産管財人は、否認の登記を申請しなければならない。登記が否認されたときも、同様とする。

2 登記官は、前項の否認の登記に係る権利に関する登記をするときは、職権で、次に掲げる登記を抹消しなければならない。
一 当該否認の登記
二 否認された行為を登記原因とする登記又は否認された登記
三 前号の登記に後れる登記があるときは、当該登記

3 前項に規定する場合において、否認された行為の後否認の登記がされるまでの間に、同項第二号に掲げる登記に係る権利を目的とする第三者の権利に関する登記(破産手続の関係において、その効力を主張することができるものに限る。)がされているときは、同項の規定にかかわらず、登記官は、職権で、当該否認の登記の抹消及び同号に掲げる登記に係る権利の破産者への移転の登記をしなければならない。

4 裁判所書記官は、第一項の否認の登記がされている場合において、破産者について、破産手続開始の決定の取消し若しくは破産手続廃止の決定が確定したとき、又は破産手続終結の決定があったときは、職権で、遅滞なく、当該否認の登記の抹消を嘱託しなければならない。破産管財人が、第二項第二号に掲げる登記に係る権利を放棄し、否認の登記の抹消の嘱託の申立てをしたときも、同様とする。
破産法 第262条(登録のある権利への準用)
第二百五十八条第一項第二号及び同条第二項において準用する同号(これらの規定を同条第四項において準用する場合を含む。)、同条第三項(同条第四項において同条第三項後段の規定を準用する場合を含む。)並びに前三条の規定は、登録のある権利について準用する。
否認の結果として、破産管財人が物または権利を管理処分するためには、それらの引渡しを受けること、あるいは破産財団への復帰について対抗要件を備えることが必要。
対抗要件については、登記・登録の制度がある権利⇒その原因たる行為が否認されたとき、または登記・登録自体が否認された場合には、破産管財人は否認の登記または登録をなすことを要する。
●否認の登記の性質 
A:訴えまたは抗弁により否認権を行使した破産管財人が単独でできることを特徴とする予告登記であり、破産管財人が勝訴したときは、抹消登記などの通常登記がなされる
vs.
破産管財人が単独で予告登記をなしうるとすると、相手方がの利益が害される。

B:抹消登記や移転登記など、否認を原因とする通常登記を総称するもの
vs.
否認の効果は破産手続中でのみ認められる相対的なものであり、抹消登記などの通常登記をなすと、その相対効と矛盾する。

○C:破産法が抹消登記に代えて認めた特別の登記である(最高足昭和49.6.27)。

否認の相対効とも調和。
破産管財人は、否認の登記を命じる確定判決に基づいて目的不動産について否認の登記を申請。(抗弁によって否認権が行使されたときは、否認の登記はなされない) 
否認の登記については、登録免許税は不要(破産法261、262)。
否認の登記は、破産手続の目的を実現するための否認の効果を公示するためのもの。

否認の登記にかかる権利の登記、たとえば破産管財人が否認によって破産財団に復帰した不動産の所有権を第三者に譲渡する場合には、否認の登記自体は登記官の職権で抹消される(破産法260A(1))。
否認された行為を登記原因とする登記や対抗要件否認によって否認された登記も同様(同(2))。
それらに後れる登記も登記官の職権によって抹消される(同(3))。
たとえば、抵当権の設定が偏波行為として否認されたときは、まず登記簿上に否認の登記が記入され、次に、破産管財人が当該不動産を第三者に売却する際には、
@否認の登記の抹消(破産法260A(1))、
A抵当権設定登記の抹消(同(2)および
B否認対象たる抵当権より後順位で、否認権の行使に対抗することができない抵当権設定登記の抹消(同(3))
がすべて登記官の職権によってなされる。
否認された行為の後否認の登記がなされるまでの間に、当該行為を登記原因とする登記にかかる権利を目的とする第三者の権利に関する登記がなされている

登記官の職権で、否認の登記の抹消および登記に係る権利の破産者への移転登記がなされる(破産法260B)。 
ex.不動産の売買が詐害行為否認の対象となり、その否認の登記がなされるまでの間に、受益者が当該不動産に抵当権を設定し、売買による破産者から受益者への以遠登記(破産法260A(2))および第三者のための抵当権設定登記がされている場合。

否認の登記を抹消し、受益者から破産者への移転登記がなされる。

通常の場合と同様に、破産者から受益者への移転登記を抹消すると、抵当権の設定登記の基礎が失われ、抵当権者の利益を害する。
登記が破産者に復帰した後も、抵当権者はその地位を破産債権者に対して主張し得る。
(もちろん、抵当権設定またはその登記自体が転得者に対する否認(破産法170条)の対象となる場合は別(破産法260Bかっこ書)。)
否認訴訟などの結果として、否認の登記。
破産手続が終了し、その時点で当該財産が破産財団中に現存⇒否認の登記も裁判所書記官の嘱託に基づいて抹消される(破産法260C前段、262、破産規則81@A)。 
 破産管財人は否認対象行為に係る権利を放棄し、否認の登記抹消嘱託の申立てをした場合も同様(破産法260C後段、262、破産規則81BC)。
破産手続き開始決定前に破産者がその不動産の登記名義を第三者に移転したことについて、破産管財人が、主位的に譲渡を虚偽表示として無効であると主張し、予備的に譲渡を否認。

主位的請求として抹消登記請求
予備的請求として否認の登記 


否認事案
給与差押えと否認  問題 支払停止(支払不能)前に差押命令が発令され、債務者の支払停止(支払不能)後に差押債権者が満足を受けた場合、
@差押債権者が執行行為によって受けた満足が破産法162条の規定する否認の対象(債務の消滅に関する行為)となるかどうか、
A否認の対象となるとして、否認の要件である支払停止(支払不能)の判断の時期を執行行為が申立てられた時とするか、差押債権者が満足を受けた時とするか
規定  破産法 第165条(執行行為の否認)
否認権は、否認しようとする行為について執行力のある債務名義があるとき、又はその行為が執行行為に基づくものであるときでも、行使することを妨げない
破産法 第162条(特定の債権者に対する担保の供与等の否認)
次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る
イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合 支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。
ロ 当該行為が破産手続開始の申立てがあった後にされたものである場合 破産手続開始の申立てがあったこと。
二 破産者の義務に属せず、又はその時期が破産者の義務に属しない行為であって、支払不能になる前三十日以内にされたもの。ただし、債権者がその行為の当時他の破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
民事執行法 第155条(差押債権者の金銭債権の取立て)
金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。
2 差押債権者が第三債務者から支払を受けたときは、その債権及び執行費用は、支払を受けた額の限度で、弁済されたものとみなす。
3 差押債権者は、前項の支払を受けたときは、直ちに、その旨を執行裁判所に届け出なければならない。
民事執行法 第159条(転付命令)
執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、支払に代えて券面額で差し押さえられた金銭債権を差押債権者に転付する命令(以下「転付命令」という。)を発することができる。
2 転付命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならない。
3 転付命令が第三債務者に送達される時までに、転付命令に係る金銭債権について、他の債権者が差押え、仮差押えの執行又は配当要求をしたときは、転付命令は、その効力を生じない。
4 第一項の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。
5 転付命令は、確定しなければその効力を生じない。
6 転付命令が発せられた後に第三十九条第一項第七号又は第八号に掲げる文書を提出したことを理由として執行抗告がされたときは、抗告裁判所は、他の理由により転付命令を取り消す場合を除き、執行抗告についての裁判を留保しなければならない。
民事執行法 第160条(転付命令の効力)
差押命令及び転付命令が確定した場合においては、差押債権者の債権及び執行費用は、転付命令に係る金銭債権が存する限り、その券面額で、転付命令が第三債務者に送達された時に弁済されたものとみなす。
民事執行法 第156条(第三債務者の供託)
第三債務者は、差押えに係る金銭債権(差押命令により差し押さえられた金銭債権に限る。次項において同じ。)の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。
2 第三債務者は、次条第一項に規定する訴えの訴状の送達を受ける時までに、差押えに係る金銭債権のうち差し押さえられていない部分を超えて発せられた差押命令、差押処分又は仮差押命令の送達を受けたときはその債権の全額に相当する金銭を、配当要求があつた旨を記載した文書の送達を受けたときは差し押さえられた部分に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない。
3 第三債務者は、前二項の規定による供託をしたときは、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。
民事執行法 第166条(配当等の実施)
執行裁判所は、第百六十一条第六項において準用する第百九条に規定する場合のほか、次に掲げる場合には、配当等を実施しなければならない。
一 第百五十六条第一項若しくは第二項又は第百五十七条第五項の規定による供託がされた場合
二 売却命令による売却がされた場合
三 第百六十三条第二項の規定により売得金が提出された場合
●執行行為の否認 法165条(執行行為の否認)

債務者が支払停止(支払不能)という危機時期にあって、債権者が債務名義を有している場合に、債務者が強制執行を恐れてその債権者に利益を得た場合と債権者が強制執行により利益をえた場合とで破産財団に対する有害性は同じ
執行行為によって受けた満足についても否認の対象となる。 
差押債権者が執行行為により満足を得る方法
@差押債権者が第三債務者である勤務先から取立てを行う場合(民執法155条)
A差押え債権者が申立てた転付命令が発令され、それが確定した場合(民執法159条、160条)
B勤務先が差押えを受けた給料についてこれを供託し(民執法156条)、差押債権者に対して配当等が実施された場合(民執法166条1項)
 差押債権者の執行行為によって受けた満足は、破産法162条の規定する否認の対象(債務の消滅に関する行為)となる。
●否認要件の判断時期
否認の要件である支払停止(支払不能)の判断の時期は、差押債権者が満足を受けた時期。


否認権1(条文準拠)
破産者を害する行為の否認
法160条
対象  破産債権者を害する行為
・積極財産の減少
・消極財産の増大 
A
(@)
要件 破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。
抗弁 これによって利益を受けた者が、その行為の当時、破産債権者を害する事実を知らなかった
B
(@)
要件 破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立て(以下この節において「支払の停止等」という。)があった後にした破産債権者を害する行為。
抗弁 これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び破産債権者を害する事実を知らなかった
ABについて
(A)
破産者がした債務の消滅に関する行為であって、債権者の受けた給付の価額が当該行為によって消滅した債務の額より過大であるもの⇒その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分について、破産債権者を害する行為
C
(B)
要件 破産者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為
相当の対価を得てした財産の処分行為の否認
法161条
対象  破産者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、その行為の相手方から相当の対価を取得しているとき
要件
(@)
@当該行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、破産者において隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害する処分(以下この条並びに第百六十八条第二項及び第三項において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
A破産者が、当該行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
B相手方が、当該行為の当時、破産者が前号の隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。
相手方が次のいずれかの場合、悪意の推定
(2項)
@破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役、清算人又はこれらに準ずる者
A破産者が法人である場合に、その破産者について次のイからハまでに掲げる者のいずれかに該当する者
イ破産者である株式会社の総株主の議決権の過半数を有する者
ロ破産者である株式会社の総株主の議決権の過半数を子株式会社又は親法人及び子株式会社が有する場合における当該親法人
ハ株式会社以外の法人が破産者である場合におけるイ又はロに掲げる者に準ずる者
B破産者の親族又は同居者
親族:配偶者、6親等内の血族及び3親等内の姻族が含まれる(民法725条)
特定の債権者に対する担保の供与等の否認
法162条
対象  既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為
A
(@) 
要件 @破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。
A債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合
イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合 
支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。
ロ 当該行為が破産手続開始の申立てがあった後にされたものである場合 破産手続開始の申立てがあったこと。
悪意の推定 @債権者が前条第2項各号に掲げる者にいずれかである場合
A前項1号に掲げる行為が破産者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が破産者の義務に属しないものである場合
B
(@)
要件 破産者の義務に属せず、又はその時期が破産者の義務に属しない行為であって、支払不能になる前三十日以内にされたもの。
抗弁 債権者がその行為の当時他の破産債権者を害する事実を知らなかった
ABについて
(B) 
支払の停止(破産手続開始の申立て前一年以内のものに限る。)があった後は、支払不能であったものと推定する。
支払の停止を要件とする否認の制限(法166条) 破産手続開始の申立ての日から一年以上前にした行為(第百六十条第三項に規定する行為を除く。)は、支払の停止があった後にされたものであること又は支払の停止の事実を知っていたことを理由として否認することができない。
定義 支払不能
法2条J
債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。
支払停止 弁済能力の欠乏のために弁済期の到来した債務を一般的、かつ、継続的に弁済することができない旨を外部に表示する債務者の行為
・手形不渡り
・債務を一般的に支払えない旨の明示的な表示として債務者に対する通知
・夜逃げ
(伊藤p77)
支払停止は一般的かつ継続的な資力欠乏を表示するもの
⇒一時的手元不如意を表明しても、これに当たらない。
逆に、不渡手形を出した後に散発的な支払を行っても、支払停止の事実が否定されるわけではない。
否認などの要件としての支払停止も、破産手続開始原因推定事実の場合と同様に、一定時点における債務者の行為と考えるべき。(伊藤p79)
過去に支払停止の事実が存在したとしても、破産手続開始決定がそれにもとづく支払不能の推定によって行われたのではなく、支払不能や債務超過の事実が直接立証されたことによって行われた場合、支払停止の事実は、否認などの要件である支払停止に該当するものは認められない。

法160条1項2号あるいは71条1項3号などにいう支払停止は、あくまでそれにもとづいて破産手続が開始されたことを前提とするもの。
行使 否認権の性質 一定の行為を否認する旨の破産管財人の意思表示によって、はじめて否認の効果が発生する。(形成権説) 
行使方法(法173@) @訴えによる行使 
A抗弁による行使
B否認の行使請求による

★否認権2
総論 趣旨 破産手続開始前の詐害行為・偏頗行為の効力を破産手続上否定し、処分・隠匿されてた財産を回復し、また債権者の平等弁済を確保する制度。 
対象 @債務者の財産隠匿・処分に関する行為(詐害行為)
A一部債権者に対する優先的な弁済行為(偏頗行為)
一般的要件 有害性 破産債権者にとって有害である。
破産債権者の責任財産の確保および破産債権者間の公平の実現にかかわる概念。
不当性  行為自体が破産債権者にとって有害なものであるとみなされる場合であっても、その行為がなされた動機や目的を考慮して、破産債権者の利益を不当に侵害するものでないと認められるときには、否認の成立可能性が阻却される。 
ある行為が破産債権者にとって有害なものであっても、破産債権者の利益より優先する社会的利益、たとえば生存権(憲法25条)などの憲法的価値や、生命や健康の維持を目的とする事業の継続という社会的価値あるいは地域社会経済に果たしている事業体の役割等を考慮して、否認の成立可能性を阻却するための概念。
破産者の行為 法文から見ても、破産者の行為をまったく不要とするのは、解釈論として行き過ぎであるが、第三者の行為が債務消滅などの効果の点で破産者の行為と同視されるものであれば、否認が認められる。
詐害行為否認(法160@) 第1類型:時期を問わず詐害行為を対象とするもの。
 積極要件:@詐害行為A破産者の害意
 消極要件:害意についての受益者の善意
第2類型:支払停止又は破産手続開始申立て後の詐害行為
 積極要件:詐害行為の存在
 消極要件:支払停止等及び詐害についての受益者の善意
詐害行為
(共通要件)
破産者の責任財産を絶対的に減少させる行為。
ex.財産の廉価売却
詐害意思及び受益者の悪意(第1類型固有の要件) 破産者の詐害意思:
自らが実質的危機時期の状態にあること、および当該行為が責任財産を減少させる効果を持つことの認識。
消極的要件:
詐害、すなわち破産者の行為が責任財産減少につながることに関する受益者の善意。
形式的危機時期及び受益者の悪意(第2類型固有の要件) 形式的危機時期:
支払停止等の発生後になされたものについては、詐害意思は否認の要件にはされない。 
消極的要件:
受益者が、行為の当時支払停止等の事実および破産債権者を害する事実について善意であることを主張・立証した場合には、否認を免れる。
破産手続開始申立の日から1年以上前にした詐害行為は、支払停止後の行為であること、または支払停止の事実を知っていたことを理由として否認することはできない。(法166)
相当の対価を得てした財産の処分行為の否認 相当の対価をえてした財産の処分行為の否認。(法161)
そのための3要件
@不動産の金銭への換価等、財産の種類の変更によって破産者が隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害する処分(隠匿等の処分)をするおそれを現に生じさせること。
A破産者が行為の当時隠匿等の処分をする意思(隠匿等処分意思)を有していたこと。
B隠匿処分意思についての相手方の悪意 相手方が行為の当時、破産者の隠匿処分意思について悪意であったこと。(証明責任は破産管財側)
行為の相手方が内部者である場合は、悪意を推定
(法161A)
(1)法人である破産者の理事等(会社法上の会計参与や会計監査人を含む)
(2)イ:株式会社の支配的持分権者
(2)ロ:株式会社の親法人
(2)ハ:株式会社以外の法人の支配的持分権者または親法人に準ずる者
(3)個人である破産者の親族又は同居者
偏頗行為否認(法162@) 支払不能又は破産手続開始申立てから破産手続開始までの時期を形式的危機時期とし、この時期になされた既存債務についての偏頗行為、すなわち担保の供与や債務の消滅にかかる行為については、破産者の詐害行為にかかわりなく、破産債権者にとって有害なものとされ、否認の対象とされる。(法162@) 
基本要件  既存の債務についてなさた担保供与又は債務消滅に関する行為(弁済(民474)、相殺(民505)、更改(民513)、代物弁済(民482)、免除(民519))。
担保供与は担保供与義務が存在する場合に限られる。
第三者から新たに借り入れた資金による弁済:

借入れと弁済が分離⇒いったん破産者の財産に組み入れられた資金によって弁済がなされるのであるから、偏頗行為として否認の対象。
両者を一体として見る⇒第三者が受益者に対価を支払って、その破産債権を譲り受けたのと変わりがないから、他の破産債権者に対する有害性は否定される。

伊藤:
否認否定説をとるが、否認を免れるためには、@借入れと弁済とが密着してなされていること、およびA借入れにあたって受益者への弁済目的が明確にされていることなどの事情があり、借入金が他の債権者のための共同担保とみなされる余地がないこと、ならびに借入れによる新債務の内容が利率等の点において旧債務より重くないことなどから、当該行為が他の債権者に対する有害性を欠くことが必要。

新旧債務の態様、あるいは第三者の融資の目的等の特別事情から詐害性を否定した裁判例(大阪高裁H1.4.27)

最高裁昭和15.5.15は否認を肯定。
最高裁H5.1.25は、故意否認に関して否認否定説をとった。
同時交換的取引の除外:
偏頗行為否認野対象は、既存債務についての担保供与や債務消滅行為に限る。(法162@柱書かっこ書)
←新規に出捐して債権を取得する者については、従来の責任財産の平等分配を期待する既存債権者との間の平等を確保する必要がない。 
行為の時期 偏頗行為は、破産者が支払不能になった後または破産手続開始申立てがあった後のものでなければならない。(法162@(1)柱書本分)
支払不能とは、「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」(法2J)
支払不能は支払停止(破産手続開始申立て前1年以内のものに限る)によって推定される。(法162B)

支払い不能状態が発生し、それが一定期間継続する中で、支払停止行為が生じることが通常であることが前提。
支払不能発生前に担保のための債権譲渡をし、支払停止などの事実が生じたことを停止条件として譲渡の効力を生じさせる旨の契約も、実質は支払不能後の担保供与行為と同視されるから、偏頗行為否認の対象となる。
受益者の悪意 以下の事実に関する受益者たる債権者の悪意の立証(法162@柱書但書)
@支払不能後の行為である場合には、支払不能又は支払停止について悪意
A破産手続開始申立て後の行為である場合には、申立てについて悪意。

受益者の悪意の対象として支払停止が定められているのは、破産者の財産状態である支払不能を受益者が認識することは容易でないことを考慮して、行為の当時すでに支払停止が発生している場合には、外界への表示行為である支払停止の認識をもってそれに代えることを認めたもの。
受益者が内部者(法161A)の場合には、支払不能等についての悪意が推定され、受益者が善意についての証明責任を負担する。(法162A(1))

これらの者については、破産者の破綻状態についての認識が事実上推定され、しかも、破綻について何らかの責任があることも多いから、証明責任を転換するのが公平に合致する。
支払不能後の偏頗行為で破産者の義務に属しないもの、またはその方法もしくは時期が義務に属しないものについては、支払い不能等についての悪意が推定される。(法162@(2))
支払不能前30日いないの非義務偏頗行為 @行為自体が破産者の義務に属さない場合。
A時期が義務に属さない場合。
詐害的債務消滅行為としても否認の対象となりえるが(法160A)、非義務偏頗行為として否認の要件が緩和され、支払不能になる前30日以内の行為も否認の対象とする。(法162A本文)
受益者の悪意についても証明責任が転換される。(同但書)

受益者たる債権者の側で、行為の当時、他の破産債権者を害する事実を知らなかったことを証明して、はじめて否認の成立が阻却される。
集合物譲渡担保の否認 否認の対象 @譲渡担保設定契約そのもの。
A対抗要件の具備。
B集合物を構成する個別的な動産・債権についての担保設定。
@について 偏頗行為否認の対象。
予約ないときに、譲渡担保設定契約を締結⇒法162@(1)(2)
予約あり⇒法162@(1) 
Bについて 担保権の成立または担保権の効力が及ぶ点では、破産者の行為による担保権の設定と同視される。
ex.譲渡担保権者の利益を図るために、人為的に在庫商品や売掛金債権を増大させる。
法160Aの詐害的債務消滅行為の類推適用。
法162@(1)Aの偏頗行為否認。 
 無償行為否認 規定 破産法 第160条(破産債権者を害する行為の否認) 
次に掲げる行為(担保の供与又は債務の消滅に関する行為を除く。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 破産者が破産債権者を害することを知ってした行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。
二 破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立て(以下この節において「支払の停止等」という。)があった後にした破産債権者を害する行為。ただし、これによって利益を受けた者が、その行為の当時、支払の停止等があったこと及び破産債権者を害する事実を知らなかったときは、この限りでない。

3 破産者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
説明  支払停止等(法160@(2)かっこ書)があった後、またはその前6月以内に破産者がなした無償行為またはこれと同視すべき有償行為は否認の対象となる。(法160B)
主観的要素(破産者の詐害意思や、支払停止等についての受益者の認識など)は不要

@危機時期において無償でその財産を減少させる破産者の行為がきわめて有害性が強い。
A受益者の側でも無償で利益をえているのであるから、緩やかに否認を認めても公平に反しない。 
ex.贈与(民549)、債務免除(民519)、権利の放棄など。
判例は、債務保証行為の無償性を肯定。
特別の要件 手形支払に関する否認の制限  手形の支払を受けた者が、支払いを受けなければ、債務者の1人または数人に対する手形上の権利(遡求権(手43、771C))を失うべき場合には否認の対象から除外される。(法163)
←手形の所持人としては、一方で、遡求権保全のためには支払を求めざるを得なず、他方で、支払を受けてもそれが否認されると遡求権を失うという二律背反状態におかれる。
二律背反状態が認められないときは、破産社たる振出人による弁済は否認され得る。
ex.
約束手形の所持人が同時に受取人である場合。
満期前の支払、支払呈示期間経過後の支払。
拒絶証書作成免除手形。
手形の買戻し 否認は制限されない。(判例・通説)
but
破産者が買戻手形にもとづいて振出人などから手形金の支払を受けているときは、買戻しによって破産者の責任財産が減少したとはいえないから、有害性の一般原則により否認は否定される。
否認が制限される場合 法163@の場合は否認が否定される。
これを予測する債権者が、支払停止等があったことを知り、または過失によってこれを知らず、破産者に約束手形を振り出させ、それを第三者に裏書譲渡して回収を図る。

その債権者から破産管財人に、第三者に対し破産者が支払った金額を償還させる。(法163A) 
対抗要件具備行為の否認  対抗要件具備行為についても、原因行為についての否認とは区別して、否認可能性が認められる。
支払停止等があった後に、権利の設定、移転または変更を第三者に対抗するために必要な行為等があった後に、権利の設定、移転または変更を第三者に対抗するために必要な行為(仮登記又は仮登録を含む)がなされた場合に、その対抗要件具備行為が権利の設定などの原因行為から15日を経過した後に支払停止等を知ってなされた場合には、否認の対象となる。(法164@)
対抗要件具備行為が破産手続開始申立ての日から1年以上前であれば、支払停止後の行為であることまたは支払停止を知ってしたことを理由とする否認は許されない。(法166)
すでになされている仮登記(不登105)または仮登録にもとづいて本登記・登録がなされた場合は、否認は成立しない。(法164@但書)

仮登記などがされていれば、権利変動が公示されるから、後に仮登記などにもとづいて本登記などがなされても破産債権者の期待が害されるとはいえない。
詐害行為否認第1類型 制限説:対抗要件具備行為も破産債権者を害する行為として独立に否認の対象となりうる行為であるが、支払停止等後の行為であって行為者が支払停止等について悪意であることを理由に否認がされる場合には、原因行為から15日を経過する前になされた具備行為については否認を制限する趣旨。

支払停止前の対抗要件具備行為であっても、詐害行為否認第1類型の対象に含まれる。
執行行為の否認 否認対象行為について執行力ある債務名義があるとき、またはその行為が執行行為に基づくときにも、否認権の行使は妨げられない。(法165)
債務名義あり @債務名義の内容である義務、たとえば金銭の支払義務や物の引渡義務を生ぜしめた破産者の行為を否認しようとする場合。
A債務名義を成立させる行為を否認しようとする場合。(ex.裁判上の自白、請求の認諾、裁判上の和解、執行受諾など)
B債務名義にもとづく権利の実現を否認しようとする場合。(ex.金銭執行による債権者の配当受領を否認、登記の移転を命じる判決に基づく院展登記申請を否認)
偏頗行為否認の可能性もある。(法162@)
執行行為 ex.差押債権者の申立てにもどづいて破産者の財産たる被差押債権について転付命令(民執159)が発令された場合。
転付命令にもとづいて、差押債権者がすでに弁済を受領⇒債権者の満足を否認して弁済金の返還を受ける。
第三債務者の弁済が未だなされていないか、または弁済金を供託⇒転付命令による被転付債権の債権者への移転自体を否認し、破産管財人が第三債務者に対して被転付債権の支払いを求める。
破産者の行為 詐害行為否認の第1類型において破産者の詐害意思が要求される場合は、詐害意思を推認させる破産者自身の行為またはこれと同視される第三者の行為が必要。
詐害行為否認の第2類型又は偏頗行為否認の場合、詐害意思が不要とされるから、効果において破産者の行為と同視される第三者の行為も否認の対象行為に含まれる。(破産者自身の行為は必要ない。) 
支払停止を要件とする否認の制限 破産手続開始申立ての日から1年以上前にした行為は、それが支払停止後の行為であること、または支払停止について悪意でなされたことを理由として否認することができない。(法166)
有害性が強い無償否認(法160B)は制限の対象外。
転得者に対する否認 認められる場合 @受益者及び中間転得者のすべてについて否認原因が存在し、かつ、転得者が転得の当時、その前者に対する否認原因の存在を知っている場合(法170@(1)) 
A転得者が破産者の内部者(法161A)の場合。
ただし、転得者の側で、転得の当時それぞれ前者について否認原因があることを知らなかったことを立証したときは、否認の成立が阻却される。(法170@(2))
B無償行為またはこれと同視すべき有償行為によって転得がなされた場合には、それぞれ前者に関する否認原因の存在のみが要件であり(法170@(3))、否認原因に関する転得者の認識は問題となれない。
善意の転得者に対して否認が成立する場合には、現存利益の償還のみが義務付けられる。(法170A、167A)